DX化とは?IT化との違いとメリット、成功事例を解説
近年「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というワードをよく耳にするようになりましたが、「IT」とどのような違いがあるのか、明確に説明できない方も多いのではないでしょうか。
DXとITはどちらも「デジタル技術を活用する」ということに違いはありませんが、実施する目的が大きく異なります。
本記事ではDX化の概要をはじめ、DX化とIT化の違いやDX化で得られるメリット、DX化を実現させるためのポイントなどについて解説します。併せて、DX化に成功した企業の実例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
DX化とは?
DXとはDigital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略で、デジタル技術を用いて、業務プロセス・製品・サービス・ビジネスモデルなどを変革することを指します。
アナログな面をただデジタル化することがDX化ではありません。組織の長期的なビジョンを描き、デジタルを活用して課題解決に取り組む必要があります。デジタル技術を活用することが目的ではなく、定めたビジョンに向けて取り組む手段としてデジタル技術を利用しています。
ここでは、DX化が推進される背景やDX化とIT化の違い、DX実現に向けたデジタル活用段階ごとの特徴について解説します。
DX化が推進される背景
「2025年の崖」の到来に備え、DX化の推進に取り組む企業が増えています。
2025年の崖とは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存のITシステムが、2025年を境に急激に業務に悪影響を及ぼし始めることを指す言葉です。経済産業省は、国内企業で既存ITシステムの改善を含むDX化が遅れると、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしています。
2025年の崖を乗り越えるために、経済産業省もさまざまな対策を講じています。中でも企業のDX化を推進するために、経営者が対応するための情報を「デジタルガバナンス・コード」として、2020年に公表されました。
また、公表後に社会情勢の変動などが発生し、対応が求められているため、2022年に「デジタルガバナンス・コード2.0」に改定されました。デジタルガバナンス・コード2.0では、基本的な指針から具体的な戦略や方策の内容がまとめられており、自社で参考にしやすいつくりとなっています。
最新の他社の対策が書かれているため、DX化対策の方向性が定まっていない会社は参考にして、具体的な戦略立案を目指してみてください。
DX化とIT化の違い
デジタル化を「目的」とするか、「手段」とするかによって、DX化とIT化に分類されます。
IT化は、デジタル技術を活用して業務を効率化・強化することであり、デジタル化を「目的」としています。一方、DX化はデジタル技術を活用して業務プロセスや製品・サービス、価値観などを変革することであり、デジタル化を「手段」として利用しています。
業務効率を上げるため新たな業務システムを導入したり、作業労働を自動化したりするだけでは、DX化と言えません。自動化によって浮いた時間を使って、適正な人員配置を考え新しい商品開発やサービスを提供するなど、次の戦略につながるゴールを目指すことが重要です。
DX化におけるデジタル活用のフェーズ
経済産業省のDX支援ガイダンスによると、デジタル活用フェーズは最終的な目標であるDX化を含めて4つに分類されており、それぞれのフェーズを段階的に進めることで効率よくDXの推進ができるとしています。
デジタル段階の特徴を以下の表にまとめました。
フェーズ | 状況 | 業務形態 |
---|---|---|
1.アナログ(未着手) | デジタル化がまったく図られていない | 紙やFAXが主流 |
2.デジタイゼーション | 業務標準化・業務効率化に着手 | 電子データや電子メールの活用など電子化にシフト |
3.デジタライゼーション | デジタルツールの導入による業務改善に着手 | システム管理によるデジタル化にシフト |
4.DX | ビジネスモデル変革や業務変革を実現 | ビッグデータを活用した新たな価値の創造 |
デジタルツールの導入や活用は、DXの前段階であるデジタライゼーションにおいて行われます。
デジタル化を進めた先にある新たな価値の創造までたどり着くことで、ようやくDX化を実現させたと言えるでしょう。
DX化で得られるメリット
DX化で得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、DX化で得られる具体的なメリットを4つ紹介します。
生産性の向上
DX化を推進する最大の理由は、生産性の向上が期待できることです。実際にDX化による成果について聞いたアンケートでは、約37%の企業が生産性の向上を1番に回答しています。
出典:DXによる成果、第1位は「業務の効率化による生産性の向上」│TECH+
DX化を推進して業務そのものの効率性を上げることによって、従業員がより難易度の高い事業に時間を費やすことができます。業務効率化は、人件費などのコスト削減にもつながるでしょう。
商品開発やビジネスモデルの構築が可能
DX化の推進により、さまざまなシーンにおけるデータの収集と分析が可能になり、顧客のニーズやトレンドを発見しやすくなります。
その結果、新たな商品開発の着想を得たり、画期的なビジネスモデルを生み出せる可能性が高まります。
DX化により膨大なデータの収集と精度の高い分析に対する信頼性が増すことによって、これまで埋もれていたデータの有効活用ができ、より付加価値の高いビジネスモデルの実現を目指せます。
リスク回避
DX化を推進することで、ビジネスにおけるさまざまなリスクを回避できます。特に、消費者行動の変化が多様化している中、データを分析して的確な意思決定を行えることが大きいでしょう。
BCP対策としても、DX化は有効な手段です。新型コロナウイルスの影響で、デジタル技術を活用したリモートワークや業務を分散する環境の整った企業が多くなりました。今後災害や事故が起こったときに業務がストップしないよう、ITツールを駆使したDX化を進めておくといいでしょう。
なお、古いデータや長年にわたってカスタマイズされたシステムは複雑化する傾向にあり、年数が経過するほど新しいシステムへの移行が難しくなります。そのため、早めに新しいシステムに移行させるようにしましょう。
このようにDX化の推進は、個人と組織の両方にとってメリットがあります。また、蓄積したデータによる意思決定はリスク回避にもつながる重要な手段です。
働き方改革への対応が可能
DX化の推進により、多様な働き方への対応が可能になります。
たとえば、リモートアクセスやクラウドサービスを利用することで、働く場所や時間に縛られずに仕事ができるようになります。これにより、テレワークやフレックスタイム制を導入しやすくなり、働き方にも柔軟性を持たせることができるでしょう。
新しい働き方が生まれることで、これまでの働き方があわず退職せざるを得なかった社員が働き続けやすくなります。また、さまざまな人材を採用できるようになるため、人材不足の解消にも貢献します。
DX化の推進は、働き方改革における課題解決の手段としても有効です。
DX化における課題
さまざまなメリットのあるDX化ですが、解決すべき課題も多くあります。
「守りのIT投資」への偏重
「守りのIT投資」とは、システムの維持管理や既存業務の効率化など、現行の業務を維持するためにIT投資をすることを指します。一方、アメリカを始めとする諸外国では、市場や顧客の分析・変化への対応、サービスの開発など「攻めのIT投資」を進めています。
日本の企業は、IT予算の9割以上を老朽システムの維持管理費に充当しています。DX化を推進して競争力を向上させるためには、守りの日に偏里するのではなく、攻めの1枚にも力を入れる必要があります。
不明瞭な経営戦略
DX化を進めるためには、デジタル化を目的とするのではなく、まず経営戦略を具体的に描くことが大切です。
しかし、企業の中にはDXを活用してどのようにビジネスを変革していくのかが不明瞭で、ただAIやデジタル技術を取り入れるだけの指示を出している企業が多く見受けられます。
DX化を取り入れる前に、トップの経営層が経営戦略を練り、現場に示さなければなりません。
人材不足
日本の企業は、社内にDXを推進できるIT人材が不足しています。DX化の進むアメリカでは、IT技術を駆使してDXを推進できる人材が社内に7割、ベンダー(システム販売者)側が3割であるのに対して、日本では7割をベンダー側に委託している現状です。
DXを推進できる人材を外部に頼っている日本企業では、今後DX人材の獲得競争が激化していくでしょう。自社内での人材確保・育成がDX化を成功させるための課題となっています。
DX化の進むアメリカなどの諸外国と比較して、日本には課題が多く見られます。人材育成や経営戦略の策定など、すぐに修正・決定できないことも多いため、早めに対策を練り時間をかけて取り組みましょう。
DX化を実現するための4つのポイント
DX化を実現させるためには、いくつか意識したいポイントがあります。ここでは、DX化を実現させるための具体的な4つのポイントについて解説します。
小規模な分野からスタートする
すべての業務のデジタル化を進めるための一大プロジェクトをいきなり立ち上げても、組織に混乱を招くリスクがあります。
そのため、まずはデジタル化しやすい分野の中から抽出した業務で小さく始めることをおすすめします。
デジタル化しやすい小規模な分野から、少しずつ業務プロセスをデジタルに置き換えていきましょう。そうすると従業員が不安や戸惑いを感じにくくなり、徐々にノウハウを積み上げながら業務に慣れていくことができます。
また、仮にその分野でデジタル化が失敗したとしても、小さく始めていればダメージは最小限で済むため、失敗を恐れずにDX化に向けたチャレンジができます。
DX化に必要な人材の採用・育成
DX化には、ITに精通した人材や、プロジェクトを牽引しながら推進していく人材が必要です。
経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が取りまとめた「デジタルスキル標準」によると、「DX推進スキル標準」の人材類型は5つに分類されています。
出典:「デジタルスキル標準」を取りまとめました!(MATI/経済産業省)
ビジネスアーキテクト | DXの目的を設定し、関係者間の調整やプロセスの進行管理を担う |
デザイナー | 製品やサービスの方針、開発プロセスの策定、ユーザー体験の設計を担う |
データサイエンスト | データ活用戦略の策定やデータの収集・解析の最適化に向けた設計を担う |
ソフトウェアエンジニア | システムやソフトウェアの設計・管理・保守及び開発や運用環境の最適化を担う |
サイバーセキュリティ | サイバーセキュリティリスクの評価、対策の実施・保守及び運用を担う |
DX化に必要な人材が社内にいるのであれば、その人材を育成しましょう。該当する人材がいない場合は、新たに採用するか、ベンダーへ依頼して人材を確保するか計画を立てておくとスムーズです。
収集したデータを分析・活用できるようにする
DX化を推進するためのガイドラインを作成する
企業全体の方向性を統一し、中長期にわたってDX化の推進を図るためには、経営戦略やビジョンを明確化した具体的な行動の指針を示すガイドラインの作成が必須です。
ガイドラインを作成しないままDX化を推進しようとしても、方向性が定まらず各部門がそれぞれ個別に行動したり、適切なリーダーシップが取れなかったりします。その結果、リソースを無駄遣いすることによりDX化の推進が滞ってしまいます。
DX化を企業全体で推進していく基盤となりますので、ガイドラインは積極的に作成しましょう。また、ガイドラインは取締役会や株主がDX化への取り組みを評価するための基準としても活用できますので、外部にもわかりやすい内容にしておくことをおすすめします。
DX化の成功例
具体的なDX化の成功例を学ぶことで、自社のDX化推進に役立てることができます。ここでは、DX化に成功した企業の事例を4つ紹介します。
味の素株式会社
味の素株式会社は、2030年までに「食と健康の課題解決企業」として社会変革を段階的に実現することを目指してDX化に取り組んでいます。具体的な取り組みの柱として紹介したいのが「パーソナライズマーケティング」と「スマートファククトリー」です。
パーソナライズマーケティングとは、顧客ひとりひとりに合わせたマーケティング手法のことです。
インターネット上で発信された情報と顧客の属性や行動、購買履歴などの情報を組み合わせて分析することで、商品やサービスの顧客満足度を高めることに成功しました。
スマートファクトリーとは、デジタル技術を活用して工場の生産性を高める手法です。AIやロボットの導入で稼働データを自動で記録することにより、管理業務を平準化しました。また、すべての工程から無駄を排除することで、効率的な生産とコスト削減の両立を実現しています。
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングが展開しているユニクロでは、RFID(無線情報を用いた情報タグ)を導入してDX化を推進しています。
RFIDを活用したセルフレジにより、顧客の会計時間を大幅に短縮することに成功しました。収集されたデータを活用を在庫管理の効率化や需要予測につなげることで、サプライチェーン全体の最適化を目指しています。
また、同社は顧客が必要な量を欲しいタイミングで提供する仕組みを構築する「有明プロジェクト」にも取り組んでいます。
デジタル技術を活用して顧客とダイレクトにつながり、顧客が望む要望や潜在的に欲している商品ニーズを素早く掴むことで、在庫の過不足を防ぎつつ迅速な商品供給を可能にする新たなビジネスモデルを創出しています。
ソニー損害保険株式会社
ソニー損害保険株式会社はAIやセンシング、クラウドコンピューティングなどのデジタル技術を活用したスマートフォンアプリ「GOOD DRIVE」で自動車保険の新しい価値を提供しています。
このアプリは専用デバイスを車両のアクセサリーソケットに差し込むだけで、ドライバーの運転行動を記録するとともに、アクセルやブレーキ、コーナリングを分析して運転スコアを提供します。運転スコアに応じて保険料の最大30%をキャッシュバックするほか、運転スコアを向上するためのアドバイスも提供してくれるため、インセンティブと安全運転を両立した画期的なアプリです。
販売に先立って実施した実証実験では、約15%の事故リスク低減効果が確認されており、アプリを利用するだけで自然と交通事故を減らす効果が期待できます。
ロジスティード株式会社(旧 株式会社日立物流)
ロジスティード株式会社は、サプライチェーンの最適化を支援するDXソリューション「SCDOS」でサプライチェーン全体の効率化と競争力向上を目指しています。
SCDOSは、複数の工程でバラバラに分散されている物流データをデジタル技術で集約化し、一元管理と可視化を可能にしたサービスです。課題の洗い出しやシミュレーションが容易に分析できることで、サプライチェーン各段階における効率的な運営や、現場のオペレーションの最適化を実現しています。
サプライチェーン全体のトータルコスト削減に加え、CO2排出量までも可視化できるため、環境負荷の軽減にも貢献するDXソリューションです。
DX化の一環として動画を活用するのも一つの手
DXを推進するための有効な手段として、動画の活用が挙げられます。動画は業界・業種を問わずさまざまなシーンで活用できる汎用性が高いツールです。
たとえば、社内研修用の社員教育や業務マニュアルを動画にすれば、説明する時間を短縮することができます。また、営業資料やプレゼンテーションの動画を顧客に視聴してもらうことで、的確な情報をより顧客に伝えやすくなります。
動画の資料や素材は、繰り返して活用できるためコスト削減効果が高く、より多くの情報を短時間で効率的に伝えることができるため、営業活動や業務プロセスの効率化にも大きく貢献してくれるでしょう。
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