テレビCMのフレームレートはいくつ?素材搬入基準も紹介
フレームレートとは、1秒間の動画に使われる画像の数を示す単位です。テレビCMは30fpsで放映されるため、30fpsで動画を撮影する必要があります。
また、昨今はYouTubeやSNS向けの動画広告が増えていますが、テレビCMに転用・流用する場合は素材の搬入基準が異なるため、この点にも注意が必要です。
そこでこの記事では、テレビCMと関係の深いフレームレートの概要と、CM撮影におけるフレームレートの注意点を解説します。
目 次
テレビCMに関係するフレームレートとは
フレームレートの種類 | 用途 |
3fps~5fps | 一般的な監視カメラや防犯カメラなど(駐車場・高速道路では30fps〜60fpsのことが多い) |
15fps | Web会議やテレビ会議(動きが必要な場合は30fpsを推奨) |
24fps | 映画 |
25fps | 欧州のテレビやDVD |
30fps | 日本のテレビやDVD・ドライブレコーダー |
50fps | 欧州の4Kや8K(※)などの高画質テレビやDVD |
60fps | 4Kや8Kなどの高画質テレビやDVD |
120fps以上 | 3D映画・ゲーム・一部の高機能スポーツ用途カメラなど |
※2K(フルハイビジョン)の16倍の解像度
フレームレート(frames per second)とは、1秒間の動画に使われる画像(フレーム)の数を示す単位です。
例えば、60fpsの動画は1秒間に60枚の画像を表示しており、フレームレートの数値が高いほど、なめらかな動きの動画になります。
人の目から見て、なめらかに思えるフレームレートは20fpsから30fps程度だといわれているため、フレームレートが30fps程度ある動画であれば、視聴者は動きにぎこちなさを感じることなく視聴できます。
フレームレートは動画のなめらかさを決めるもの
フレームレートは動画のなめらかさを決める要素であり、フレームレートが低ければ、動画はカクカクとしたものになります。反対に、フレームレートが高ければ、動画は美しくなめらかなものになります。
日本のテレビや動画共有サイトの動画は30fpsであることが多いため、フレームレートが30fpsあれば視聴者は動画を違和感なく視聴できるでしょう。
例えば、1秒間に5回転のスピンを行うフィギュアスケート選手を10秒間、違うフレームレートで撮影したとします。
・1fpsの場合:10秒間の映像を10枚の静止画で撮影し、前の画像から次の画像までに5回転する
・5fpsの場合:10秒間の映像を50枚の静止画で撮影し、前の画像から次の画像までに1回転する
・25fpsの場合:10秒間の映像を250枚の静止画で撮影し、前の画像から次の画像までに0.2回転する
1秒間に使用される静止画の数が多ければ多いほど、なめらかな動画になるのです。
「インターレース」「リフレッシュレート」との違い
フレームレートと似たものに「インターレース」と「リフレッシュノート」があります。ここでは、フレームレートとの違いとそれぞれの特徴を見ていきましょう。
インターレース
テレビ画面は、多数の水平な「走査線」でできています。その走査線を一本おきに、偶数走査線と奇数走査線を交互に描くことで映像を表示する方式のことを「インターレース方式」といいます。日本では「飛び越し走査方式」とも呼ばれ、日本のテレビ放送はこの方式が採用されています。
一方で、全ての走査線を一本ずつ順次描いて映像を伝送する方式が「プログレッシブ方式」です。プログレッシブ方式のほうが、画像一枚あたりの解像度は高くなります。
インターレース方式は、大量のデータをダウンロードし、概要だけを把握したい場合に、少ない通信容量で確認できるというメリットがあります。かつてのアナログカメラは、テレビ放送で採用されているインターレース方式を採用していました。
しかし近年、より解像度の高い高画質での撮影が可能なプログレッシブ方式を採用するデジタル機器なども登場しています。
リフレッシュレート
リフレッシュレート(Hz)とは、1秒で書き換え可能な回数を表す数値です。例えば、リフレッシュレートが60Hzのモニターの場合、1秒間に60回画面が更新されます。
数値が高いほど、表示される動きがなめらかになるため、動きの多い動画を視聴したりゲームを快適にプレイしたりする際に重要になる要素です。一般的なモニターのリフレッシュレートは60Hzが主流ですが、ゲーミングモニターは144Hz以上のものが主流となります。
リフレッシュレートもフレームレートも、ともに映像のなめらかさに関係する数値ではありますが、リフレッシュレートは画像の表示側に関係する要素であるのに対し、フレームレートは画像の出力側に関係する要素です。
フレームレートを高く設定したとしても、リフレッシュレートが低い場合は、フレームレートの数値がリフレッシュノートの数値にあってしまう点に注意が必要です。
CM撮影におけるフレームレートの注意点
ほとんどのテレビ局が、テレビCMのフレームレートの規格を30fpsとしています。そのため、フレームレートを30fpsに設定していなければ放送してもらえず、フレームレートの変換が必要となります。ここからは、テレビCMの制作時におけるフレームレートの注意点について解説します。
1.カメラごとのフレームレートが異なっていないか確認する
テレビCM制作時のミスとして起こりやすいのが、複数のカメラで撮影する際に動画のフレームレートが統一されていないというものです。そのため、撮影時は必ずカメラごとのフレームレートが異なっていないかを確認しておきましょう。
特別な理由がないにもかかわらず、フレームレートが異なる動画を組み合わせると、それぞれの部分でなめらかさの違いに視聴者が違和感を覚える可能性が高くなります。
2.編集時のフレームレート設定が適切か確認する
撮影した動画は、撮影時と同じフレームレートで編集しましょう。撮影時と編集時のフレームレートが異なると、動画同士がきれいにマッチングせず、音ズレが発生しかねません。また動画素材も、撮影したテレビCM用の動画と同じフレームレートか確認するようにしましょう。フレームレートの異なる素材を使用すると、編集に問題が生じることがあります。
3.フレームレートの変換はぎこちなさが残る可能性がある
フレームレートの変換をすると、動画にぎこちなさが残る可能性があります。フレームレートを変換するということは、動画の1秒間あたりの画像数を変えるということになるため、ぎこちなさを感じる動画になりやすいからです。特に、フレームレートの低い動画のフレームレートを上げる際、カクつきが出て違和感のある動画になってしまう場合があり得ます。
このため、極力フレームレートを変換する必要がないような撮影・編集を行うことが望ましいです。
用途別!用途に応じたフレームレート
動画は、用途に応じて適したフレームレートが異なります。ここでは、用途ごとに適したフレームレートの設定を見ていきましょう。
テレビCM
日本のテレビは、デジタルテレビ放送の開始時にNHKが主導して開発された「ISDB-T」という規格にも基づいています。ISDB-Tでは、映像の解像度を1440×1080ピクセル(アスペクト比4:3)とし、映像の走査方法はインターレース式が基本です。そして、映像のフレームレートは29.97fpsを基本としています。
そのため、テレビと同じくテレビCMも、動画のフレームレートは30fpsで撮影します。前述のとおり、複数のカメラで撮影した際にはフレームレートが30fpsに統一されているか撮影前に確認することをおすすめします。
YouTube動画
YouTube動画は、24fpsから60fpsのフレームレートを設定するのが一般的で、多くの動画が30fpsのフレームレートでアップロードされています。
パソコンやスマートフォンのリフレッシュノートは60fpsであるため、フレームレートは60fps以下とするのが良いでしょう。
リフレッシュレートの高いゲーミングパソコンやスマートフォンの機種でない限り、60fps超のフレームレートを設定しても表示側のスペックが不十分で、高フレームレートの意味がなくなる可能性があります。
Web会議
Web会議やテレビ会議に適したフレームレートは、15fpsから30fpsです。
15fpsであっても表情やジェスチャーは伝わりますが、テレビと同等あるいは動きを伴うヨガなどのオンライン指導といった場合には、フレームレートを30fpsに設定すると良いでしょう。
ドライブレコーダー
ドライブレコーダーに適したフレームレートは、30fpsです。ドライブレコーダーは、事故やトラブルがあった場合に客観的な証拠となる映像・音声を記録するために、高いフレームレートが設定されています。
高フレームレートで解像度と画素数も高いドライブレコーダーなら、事故で重要となる情報を読み取れる可能性が高いでしょう。
知っておきたいテレビCMの素材搬入基準
テレビCMをテレビ放送局に搬入する際には、フレームレート以外にも注意したいポイントがあります。ここでは、以下の3つについて解説します。
・基本サイズ
・音声設定
・納品形式
基本サイズ
日本民間放送連盟「テレビCM素材搬入基準【2023年2月改訂版】」によると、テレビCMの基本サイズは「標準アスペクト比(縦横比)16:9」「デジタル記録方式:1080i」です。各放送局の定めるフォーマットで、ハイビジョン(HD)で搬入しなければなりません。
なお、デジタル記録方式の1080iの数字部分は解像度です。1080なら、解像度は「1920 x 1080ピクセル」です。「i」は走査方式で、インターフェースを表します(※)。
オンライン搬入の可否や搬入可能な媒体は、各テレビ放送局の機器の設備状況などにより異なります。
※走査方式がプログレッシブの場合は「p」で表記されます
音声設定
テレビCMの音声記録方式は「ステレオ」「モノラル」「5.1+S」からいずれかを選択します。
5.1ch素材はテレビ放送局によって、受け付けない場合があります。音声装置に付加装置が必要となる場合は受け付けられません。
テレビCM内容の「開始点から最小限0.5秒間」「終了点前から最小限0.5秒間」は無音声にし、テレビCM本編の音声レベルは「テレビ放送における音声レベル運用規準(民放連技術規準T032-2020)」を満たす必要があります。
なお、テレビCM制作時に目標とする平均ラウドネス値は「-24.0LKFS」です。
納品形式
テレビCMの納品には、XDCAM・P2カード・オンライン(インターネットを通じてオンラインで素材搬入すること)での搬入方法があります。
また、オンライン搬入の可否や搬入可能な媒体は各テレビ放送局の機器の設備状況により異なります。
フレームレートは適切な設定が大切
フレームレートとは、1秒間の動画に使われる画像の数を示す単位です。
フレームレートの数値が高いほど、なめらかな動きの動画になりますが、フレームレートが高くなるとデータ容量が大きくなるほか、搬入に際して変換が必要になる場合もあるため、動画の用途に応じて適切なフレームレートを設定する必要があります。
映像制作を専門に行う「シードアシスト」では、テレビCMにおける制作をトータルでサポートしています。業界を問わず、さまざまな業種のお客様から動画制作をご依頼いただいており、これまでに通算350社・2,500タイトルの実績があります。
お客様のニーズにあわせた最適な映像戦略をご提案いたしますので、テレビCMの制作に関するお悩みは、シードアシストまでお気軽にご相談ください。
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